大学生の父兄同伴

 大学の入学式に父兄家族が大挙して参加して話題になっている。マンモス大学の入学式はほとんどが九段の武道館で行われている。式には参加する学生の数より多い父兄が全国から駆けつけ会場は大混乱そうである。子供の頃からの塾通いの結果の難関突破の晴れの入学式である、良いじゃないかと私は思っている。不景気続きと言いながらも世の中に余裕が出来てきた証拠だと思う。 
 私が中央大学に入学したのは昭和33年4月、卒業したのは37年3月であったが、勿論親は入学式に出席する閑などはなく、それどころか私は入学、卒業両式典に出席しなかった。特に卒業式では特別表彰を受けながら出席せず、後から学生課に記念品を貰いに行ったら不届き者と怒鳴られた。レスリングに熱中していたこともあったのだろうが、式など大した問題とは考えていなかった。
 私の親父は昭和5年明治大学の卒業であるが、卒業式に帽子と教科書をお茶の水の聖橋の上から川に捨てたと粋がっていた。子供の頃からこの話を聞いた私は、卒業試験が終わったその日の中に教科書をヘドロの神田川に投げ捨ててしまった。親父は下町で育ち、江戸っ子独特の「しゃらくせい!」という精神を持ち続けていた。
 我が息子であるがやはり遺伝で母親が高校の卒業式に出席したら、全く他人のような顔をして近寄らなかったと、妻は帰ってきてカンカンに怒っていたので、やっぱりと私は大笑いした。妻はそれ以来息子の大学、大学院の入学、卒業式には出席しなかった。
 私達の子供の頃は男の子は中学生にもなると親と一緒に歩いたり親と二人だけで何処かに行くなどということはなかった。そんな中で親子が思いやり心配し合う、すがすがしい関係だった、遠く懐かしい良い時代であった。
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