俳句

 私の育った家庭は終戦後食べ物もない時代から句会を開いていた。両親とも江戸っ子だが、母の兄弟は道楽者ばかりで金もないのに、歌舞伎座、寄席、踊りの観劇は欠かすことなく、相撲は本場所はもとより、高砂部屋にも入り浸りであった。
 俳句は母と叔父が中心になり10人程で「浮き草会」と言う句会を開催していた。私達兄弟は小学生であったが、自然に俳句に親しみ結構大人に誉められるような俳句を作った記憶がある。
 その後、八田会長の秘書をしている頃、ホトトギスの同人である会長が俳句を一日一句を日課としていたので、私も作って会長に批評を頂いていた。
 兄は新聞社に勤めていた関係もあって俳句を続けていたようで、5年程前兄弟で句会をしないかと言って来た。弟が幹事となって「浮き草会」を再開して、ある程度のレベルの句会になっている。年2度ほど従兄弟や友人も誘って楽しい句会を開催しているが、最近になり私は俳句にサッパリ気が乗らず、新聞に出ている俳句を見ても、なにが良いのか分からなくなってしまった。
 少し感性がぼけが来たのかもしれないと思っていたら、素晴らしい俳句に出会った。小学生が作った俳句で「お父さん天国はもう冬ですか」何でもない句かもしれないが、私には強烈な印象で忘れられない俳句となった。私の解釈では「父を亡くした少年が、お父さん天国で元気にお暮らしですか、こちらは心配有りませんよ。僕はお母さんを助け、妹の面倒もみてしっかっりやってゆきます。」そんなことが感じられる少年の素晴らしい句だった。
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