時津風暴力事件に思う

今回の暴力事件は同じ格闘競技に携わる者として、全く残念に思い、また理解できない事件である。入門して数カ月しか経っていない初心者に三十分もぶつかり稽古をさせ、挙げ句の果てにバットやヒール瓶で殴ったとのこと、なんたる暴力、稽古でも何でもない。暴力事件であり、殺人事件である。しかし、どうしても理解できないのが、相撲を教えることの専門家である親方がなぜこんな馬鹿なことをしたのか。今までの相撲界ははどうだったのか、全く理解できない。

 私の母校である中央大学相撲部は昭和30年代当時、歴代のアマ横綱を輩出した名門クラブだった。レスリング部と隣接していた相撲部の練習は常に見ていたが、リンチのようなしごきなど見たことがなかった。
 又、私の在籍したレスリング部は昭和30年代は世界最強のレスリングクラブであったが、新入部員はお客さんと言って、3ヶ月間は掃除さえさせなかった。まして練習においては常に最上級生が、練習の一部始終を見ており、危ない状態には即座に止めに入った。私は小生意気な新人であったが、一度も殴られることはなかった。また在籍4年間で後輩を殴ったこともなかった。
 他の格闘技のクラブでも、練習は強くすることが目的なのであるから、あのような暴力指導は絶対無いと私は信じる。

 友人の具志堅用高氏のボクシングクラブを見学したことがあるが、全く合理的な理詰めの練習に感激した事を思い出す。もし相撲界にあのような暴力練習が蔓延っていたとしたら、今後若者の入門者など絶えてしまい、国技などといっていられない事態になるであろう。

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