レスリングの改革

 オリンピック種目からレスリングを外すというIOCの警告は今考えると適切だったかはともかく、レスリングにはとってはタイムリーな警告だったと私は思うようになった。
 外された当初はIOCとはなんと訳の分からぬ団体だと思った。オリンピックから外すのなら他にいくらでも対象団体はある。近代五種は軍隊の訓練で既に近代ではなくなっている。サーベルも射撃も乗馬も陸上も全て独立してオリンピック競技にあり、当然除外第一候補である。テコンドウも競技人口は限られており判定はレスリングより遙かに解りにくい。射撃の面白くなさはレスリングの比ではないし、面白くしろと言われても替えようがない。
 何故IOCよりオリンピック史に古く存在してレスリングをオリンピックから除外したのか全く納得出来る説明はなかった。実際の理由はロゲ会長しか解らないだろうが、一部IOC委員がレスリングを本気で外そうと思ったことは事実だ。
 しかしその反響の大きさと圧力に慌ててIOCはオリンピック復帰のタイミングと理由付けに右往左往したというところだろう。何しろ米、ロ、イランが手を組んでニューヨークで試合をしたのだからIOCもたまげたろう。あの時点で流れは大きく変わりレスリングの復帰はほぼ確実となったようだ。
 FILAは素早く新会長を選出し、女子役員を選出し、ルール階級を改訂してIOCの指摘に答えた。ルールは今後もまだ改善されてゆくだろうし、階級も定まっていない。しかし、FILAの意識改革には大きな意味があった。
 審判の独善偏見、勉強不足、時には買収もあったとも聞く。金銭による勝負のやりとりもあったと聞く。IOC総会では汚職という言葉で新会長ラロビッチは追求されていた。今日の日本の相撲協会は八百長問題後の低迷を脱した感がある。臭い物にふたをして窮地を乗り切ろうとしてもなかなか巧く行くものではない。FILAは実に良いタイミングで新会長が交代し、長年問題視されていたルールに本気で手を付け、女子のクラスが増え、「公益財団」日本レスリング協会には七年後の東京オリンビックに向けて確たる目標が出来たのである。

 
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