レスリグのルール改訂
 
 オリンピックが終わると必ずFILAはルールの改訂に手をつける。改訂したルールに問題点があってもオリンピックの3年前になるとFILAの審判委員会はそのまま押し切ってしまう。これは当然であり、そうでなければ世界のレスラーを共通の場で試合をさせることは出来ない。
 世界が目指したオリンピックが終わると、FILAは各国から指摘されていたルールの問題点の再検討にはいる。こうして次のオリンピックに向かって新しいレスリングルールが確立され世界に告知される。
 そこで必ず問題になるのが、新ルールの勝手な解釈と、FILA役員の言動である。フランス語が共通語となるFILAにおいては、世界に複雑なルールを理解させるのは至難の業である。そこで欧米の役員達は威厳と体面を誇示するあまり、ルールの不備を突く現場の指摘に耳を傾けないで、既に決まったことであると押し切ってしまう。それが全ての混乱の元となる。
 どうにもならない不備はさすがのFILAも修正することとなるのである。世界中が次のオリンピックに向けてルールの裏も表も研究していくのであるから、ルールを改訂するFILAも大変である。
 我々が何度も経験したルールの混乱が今年もまた起こるであろう。ルールを活用する、ルールを味方に付ける、ルールの裏をかく、こうして新しいルールと審判とレスラー、コーチとの駆け引きが始まるのである。

 ルールとは、基本的にはしていけない事の集約である。まず時間である。限られた時間を決めてその時間内で戦うことを定める。次に行動範囲である。マットの行動の境界線を定めてその範囲内で試合をすることを規制する。以前はサイドラインを割れば全てノーポイントであったが、今は逆にワンポイントとなる。次に技である。技もルールの改訂によりずいぶん変わってくる。試合を面白くするという理由で大技が優先され、試合の進行を妨げるような技は禁止されることはもとより、服装、態度、応援までも規制の対象になる。
 ルールとは試合の選手の行動規制であるから、レフリーの目をかすめて反則技をかけたり、ルールの裏をかいたり、相手をごまかしたりする事も試合の駆け引きの内とされるのである。特に国際大会が多いバルカン諸国の選手達はその辺の試合運びに長けており、日本選手の到底及ぶところではない。
 日本選手団には、そんなことを研究するなら、もっと本筋のレスリングそのものを研究しろ、という意見もあるが、少なくとも相手はそこまで研究している、という認識は持つべきである。
 

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