第9回全日本選手権大会

昭和17年、九段の軍人会館で挙行された第9回全日本選手権について。
 昭和17年7月16日の日本経済新聞は次のように記載している。

本年度レスリング選手権大会は十五日午後六時から九段軍人会館で挙行、優勝者は右の如し。
優勝者はフライ級立澤弘(立大)、バンタム級・安次富長睦(慶大)、フェザー級・村田恒太郎(明大)、ライト級・余越政美(明大)ウエルター級・島谷一美(日大)、ミドル級・佐藤徹(早大)である。

 しかし、昭和17年の全日本選手権の記録は現在(財)レスリング協会には残されてない。昭和18年、戦前最後の大学リーグ戦は明治大学地下道場で行われ、明大が優勝したがその記録も残されていない。
 当時、敵性スポーツとしてレッテルを貼られ、廃止の瀬戸際にあったレスリングは、協会が軍部の圧力を気にして、当時の記録を抹消した事も想像できる。その後、学生達は決死の誓いを胸に戦地に向かったのである。
 第二次世界大戦ではレスリング関係も多くの戦死者を出した。運良く祖国に復員した人達の中に、八田一朗を始め、風間栄一、伴茂雄、村田恒太郎、林真、神田幸二等の戦後の日本レスリング協会を築き上げた人たちがいた。ヘルシンキのゴールドメダリスト石井庄八も予科練から中央大学に復学した学生であった。

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