アテネの実験に注目
 
 アテネではオリンピックを開催するにあたり、ギリシャ政府が遺跡保持を優先に街の再開発を行う計画をたてた。その結果、最も有効な交通手段として地下鉄の建設に総力を注いだ。オリンピック開催時はその地下鉄が充分に機能し、オリンピック関係者を始め、世界から集まった観客、アテネ市民の重要かつ便利な足となった。三方向の地下鉄が分かりやすく色分けされており、主な中継点で結ばれた地下鉄は、始めて乗った外国人にも充分にアテネの街の散策に利用できた。
 何より素晴らしかったのは改札のフリーパスである。切符を買う煩わしさ、難しさがなく、乗客はセンサーの付いたゲートを通りすぎるだけである。我々オリンピック関係者や、入場券を持っている人々は全て街の交通機関は無料になり、それ以外の人々は一律共通切符を買うだけで、入出改札のチェックは受けない仕組みになっている。切符所持のチェックは交通監視員が抜き打ち行い、万一無賃乗車が発覚した場合は規定料金の40倍を支払う決まりになっている。
 我々旅行者にとって全く便利なこの制度が、物取りなど治安が悪いと言われているアテネで試されていることに大変興味を持った。もともとヨーロッパの乗り物にはこの様なシステムのものがあるが、最新鋭の交通機関で試されている市民を信頼したシステムの採算の結果を是非知りたいところだ。人件費の大幅な削減、改札の大幅な簡素化、この交通機関を自分たちのものとして育てようとするアテネ市民の試みが成功することを願い、日本の第三セクターの交通機関のモデルになってもらいたいと願っている。
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