人質家族と拉致被害者家族
 
 小泉総理訪朝の成果については、立場によっていろいろと評価の分かれるところであるが、私はよくやったと思っている。北朝鮮が嫌いであろうと、腹が立とうと、隣の国であり、原爆とミサイルを持つこの国と付き合ってゆかなくてはならないのだ。歴代の総理もあらゆるルート使って接触をはかり友好関係を持とうとしたのだが、果たせなかった。小泉総理は誰も拾わなかった火中の栗を拾い、拉致された5人とその家族を日本に取り返したのだ。あの金正日を相手に大変な成果で、一昔前なら考えられなかったことである。外交交渉には秘密にしておかなければならない話も、約束も、沢山あるだろう。表に出た話だけを問題にして批判するのは簡単だが酷である。
 私は子供が拉致された家族には大変同情し、僅かだが支援の寄付もしてきた。しかし、このたびの小泉総理訪朝の結果に対する激しい反発には、同情しつつもいささか違和感を感ずる。現状では北朝鮮との話し合いを今後とも継続して持つには、最善に近い方法ではなかったかと思っている。
 北朝鮮に対するカード、カードと専門家のような用語を誰もが使い、駆け引きをして北朝鮮を追い込めと拉致被害者家族会も言っているが、しかしこれは外交上のテクニックであり一種の脅しである。脅しの根底には何時でも戦う気構えが無くてはなんの意味もないのだ。とうてい戦争などする気構えのない我が国で使える外交手法は限られている。北朝鮮が日本との友好関係を築くことの価値を理解し、日本との経済的交流を評価し真剣に対処するならば、拉致された人々の問題を自ら解決しようと務めるだろう。まずは頑なな北朝鮮首脳を話し合いの場に引き出さなくては何も始まらないのだ。
 イラクの人質の家族達が自分たちの被害者意識だけで、高飛車に政府の方針にクレームをつけ、世間から大顰蹙をかったのは、つい先日のことである。私は気の毒な拉致家族の皆さんが世間から背を向けられる事の無い様心から願うばかりだ。
 
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