祈ること
 
 私の従兄弟の夏子姉は、カソリックのシスターとしてローマ法王にも謁見した人でした。もう故人になりましたが、私は夏子姉を本当の姉のように思って育ちました。夏子姉から修道院の院長時代に、聖母マリアの聖地ルルドに行った話を聞きました。「雄ちゃん、これは本当にある話なのよ」と言って、ルルドの奇跡の聖水の話してくれました。
 ルルドの聖水については、日本でもよく紹介されておりますのでご存じの方も多いと思いますが、少しだけ説明します。ピレネー山脈の麓に有るルルド村は聖母マリアの聖域と言われ、世界中から身体に障害のある人、病気の人が年間四百万人も訪れます。聖母マリアが出現され、ベルナデッタという少女に泉を掘らせたという奇跡の泉は、満々と水をたたえており、その聖水を飲み、或いは水に浸かり、祈れば、いかなる病も治癒してしまうそうです。現在まで治癒した人の申告は七千件を越えておりますが、医学的に証明はされてはいないようです。夏子姉はルルドの聖水を日本に持ち帰り、癌で苦しんでいた弟に飲ませました。あれから二十年が経ちましたが、夏子姉の弟は教員生活を勤め上げ、七十歳になる今も元気に暮らしております。
 先日、産経新聞の「正論」欄に、筑波大学名誉教授の村上和雄先生が「西洋医学の限界を打ち破る新しい波」という記事を書いておりました。それによると、米国では西洋医学の限界を感じ、針、灸の東洋医学をはじめ、瞑想、音楽、信仰、等の医療に及ぼす効果についての研究が、非常に活発化していると書いてあります。さらに先生が注目しているのは、新しい分野で祈りの治療効果が明らかになり出したことです。ハーバード大学やコロンビア大学などの権威ある大学が競ってこの研究に乗り出しており、この研究では祈りの効果を肯定する発表が相次ぎ、「精神神経免疫学」という新しい分野も開かれたそうです。「人類が古来続けてきた「祈り」が最先端の研究分野になりつつあるのです」と、驚くべき事を先生は言っておられるのです。
 今までも「病は気から」である、プラセボ効果については、科学的にも認知され良く知られていますが、私の言っている祈りは、愛する人を助けるために、人が全霊で祈った場合間違いなくその効果はあり、祈らなかった場合より治癒率は高く、そのデーターもあると言っておられます。人類は数千年にわたり、どの民族も真摯に祈りを捧げてきました。それはまさしく人類の文化の遺伝子といえます。この祈りも既に一部では科学的に証明されようとしておりますが、しかし祈りが神に通ずる聖なる部分については、おそらく科学だけでは永久に分からないかも知れない、と村上先生はおっしゃっております。
 
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