有楽町で会いましょう
 
 先日、木口道場の木口宣昭氏と有楽町で待ち合わせて一杯飲んだ。待ち合わせ場所はガード下のミルクホールという居酒屋で、店中に50年代のホップスをがんがん流し、壁には「君の名は」「駅前シリーズ」「座頭市」の始めのものなどの映画ポスターが貼ってあり、戦後の日本の雰囲気を売り物にしている居酒屋である。初老の紳士達が汚い店の中でいかにも楽しそうにジョッキを傾けていた。木口氏との待ち合わせはちょっとした行き違いで会うことが出来なかったが、携帯電話で確認し合い問題もなく会うことが出来た。
 飲みながらこんな事を考えていた。此処は有楽町。戦後最大のドラマ菊田一雄の「君の名は」はここから始まった。戦火を逃れる見知らぬ男女が、もしお互い生きていたら有楽町の橋のたもとで一年後に会いましょう。その後二人は、すれ違い、すれ違い、日本全国を行き違いながらドラマが進む。銭湯ががらがらになったと言われたこのドラマも、携帯電話があったら成り立たなかった。飛躍的に進歩した通信の時代に育った今の若者にこんな事は理解してもらえるだろうか。
 つまらぬ事を考えながらビールを飲んでいると木口氏に、「先輩オールディーズに聞き惚れていますね。古い音楽ではありませんね。最も素晴らしい、どの時代にも受け入れられる音楽ですよ。」ミュージシャン木口宣昭氏は我が意を得たりとリズムを取りながら懐かしの音楽に聞き入っておりました。帰りの電車の中で考えてみました。我々の年代とまったく違った環境で育った若者達の考え方、価値観がどれほど違うか考えたことがあるか、確認したことがあったか、大きな違いもあるが、以外と年代を超えた共通する部分も沢山有るのではないか、おかしい、理解できないなどと逃げないで、ビートルズが年代を超えて共感できるように、色々な分野で年代を超えた普遍の価値があるのではないだろうか。六十三歳、肉体を鍛え、脳味噌をフレッシュにしておかないとぼけてしまう年齢である。
 
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