審判の使命

 白熱するサッカーワールドカップを見て、大変だなと思ったり、疑問に思ったりしたのが審判の判定である。サッカーの審判は試合中ボールの行方からひとときも目を離さず走り回り、興奮する選手の間に入り、さとし、なだめ、毅然としてぺナルティーを課し、試合を進行していく実に大変な仕事である。
 審判の判定は絶対であり、それだけに白熱した試合に水を差す場面もしばしば見受けられる。ワールドカップともなると百戦錬磨のプロ選手、相手に反則をされたようなジェスチャーの巧いこと、今痛みに悶え苦しんでいたかと思えば、あっという間に立ち上がり脱兎のごとく走り去ってゆく。
 素人目にはどちらが反則なのか全く分からない。あれはかわいそうだと思ったレッドカードの退場もいくつもあった。ジダンの退場はその象徴的な出来事だった。主力選手が退場させられた為に試合を失ったチームが幾つもあったが、しかしワールドカップの各国のチームは実に負けっぷりが良かった。おそらく力の限りを尽くしての結果だったのだろう。どのチームも清々しい敗戦であった。それだけに審判は公平であるのは勿論だが、常に冷静に対処し、最高の試合を引き出すための裏方に徹すべきであると感じた。
 どの競技でも目立ちたがる審判はいる。審判が目立ためには反則を取りることである。大きな声で選手に警告を発することである、しかし、審判の仕事はむやみに反則を取ることではない。時には反則に目をつぶり試合を円滑に進ませ、選手の技量を十分発揮させ、立派な試合を完結させることにあるのである。
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