投げ技の研究

 最近のレスリングはルールの改正もあって、目の覚めるような投げ技を見ることが少なくなった。かつての日本選手はほとんどの選手が何らかの投げ技を持って投げ技と低いタックルとの組み合わせで外国選手を脅かせていた。外国選手を攻めるには投げ技を警戒してバランスを崩したところをタックルで攻めることが最も効果的な攻撃であった。
 手足が長く懐の深い欧米選手にタックルだけを警戒した体勢をとられるとそう簡単にはタックルが決まるものではない。レスリング強国時代の日本選手は独特の足技、投げ技で外国選手を脅かし、低いタックルで攻め立てて勝利を収めていった。
 東京オリンピックのメダリストたちは投げ技が巧かった。その最も象徴的な選手が東京オリンピック・フリースタイル62sで優勝した渡辺長武である。タックルを入るかに見せて、乾坤一擲投げる首投げ、投げを嫌がり態勢が高くなったところにタックル、実に鮮やかに技が決まり投げた後は必ずフォールした。グレコ52s優勝の花原勉もグレコ57s優勝の市口政光も投げ技の名人であった。花原の首投げ、市口の一本背負い、一試合に一度は決めるまさに名人技であった。両選手ともその投げ技を武器にフリースタイルでも大いに活躍した。今のルールは投げ技を失敗してもポイントはとられない、それならどんどん投げ技をかければよいと思うのだが、それがかえって不確実な技をかける原因にもなっているようにも思える。
 日本男子レスリング復活には投げ技の習得が欠かせないと私は思うのだが、全日本選抜の優勝者田岡選手「自衛隊」の勝利ににその一端を見たように思う。
 
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