私が言ってはいけないこと

 わたしは(財)日本レスリング協会の常務理事であるから、協会の方針に反することは言えない。しかし、レスリングのOBとしてどうしても言いたいことがある。それはレスリングの国際ルールのおかしな点である。幾ら私がおかしなルールと言っでもFILA「国際レスリング連盟」の審判委員会で決定した事なのだから、これに日本が異議を唱えるのはルール違反であるし、世界から顰蹙を買うであろう。特に福田会長は世界連盟副会長としてFILAの中枢にあり、反対などできる立場にないことは十分承知してる。そのことを十分承知した上で私の考えを述べたい。

 私は国際ルールがどのように変わっても決してマイナスにならない、永続的な日本国内ルールの確立を計るべきと考えている。私の国内ルールの目指すところは「国際ルールの本質からはずれない、観客に分かりやすい、戦っている選手に常に公平である、大筋のルールの根幹は変更することはない」という点である。このような条件を十分に満たしたルールの確立を、協会の英知を集めて時間をかけて作り上げなければならないのではないかと思っている。

 国内ルールで行われる試合は大学選手権、高校選手権、国体等で、全日本選手権、国際大会予選はFILAルールで行えばよいと考えている。FILAからクレームの付かないような方法を考え、米国のカレッジスタイルよりは遙かに国際ルールに近いものと考えればよい。たとえばフリースタイルの片足取りの場合でも交互にせめて勝敗を決すことにすれば、勝負は公平であり、国際ルールのクリンチの場合の攻めや守りの強化にもなる。

 現行ルールではラウンドごとに勝敗を決するために、そのラウンドを負けている選手が残り時間があるのに攻めようとせず、次のラウンドに備えて力を蓄えようとしている試合が多々見られる。これらは試合としては全くつまらないものとなり、ますますレスリングの魅力が失せてゆく。押し出しを含め、戦意のない選手には徹底してペナルティーを課すようなルールも必要であると考える。まだ他にも沢山問題があると思うが、審判委員会、強化委員会、大学連、高体連、全ての専門家で話し合い、不変の国内ルールを作り上げてもらいたいと願っているのは私だけではないと思うのだが。
 ちなみに私が理事長をしている少年少女連盟のルールは22年間一度も変わっていない。
 
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