レスリング人口の減少と少年レスリングクラブの役割について

 近年レスリング界では人口減少が顕著に現れているという。聞いた話によると、高校などでは、以前は加盟人数が5000人台だったのが現在では3000人台にまで減っているという。今の時代、色々なスポーツがあり、色々な遊びがあり、色々な楽しいことがある。そして、飽食の時代、つらいことはみんな避ける傾向にある。更にいえば、少子化の影響で子供の人口は年々確実に減っている。レスリング人口が減っていくのも仕方あるまい。

 ところが、奇妙なことに、少年レスリングの人口は減るどころか、年々確実に増加している。底辺はどうも拡大傾向にあるというのだ。これは一体どうしたことか。一つには、中学生くらいになるとみんな大人の前段階として自我を持ち始め、自分で考え始める。すると、あまりイメージのよくない(ここが問題なのだが)レスリングを避け、格好いいスポーツ、もっといえば、女の子にもてそうなスポーツに動いてしまう。あるいは、楽しいことに走ってしまう子供もいるだろう。女の子だったらなおさらだ。

 でも、一番大きな原因はやはり中学校にレスリングのクラブがないということだろう。日本というところは、明治以降、まず学校でスポーツをするということが一般化し、特に中学生以降の学外クラブ組織というのはあまり発展しなかった。そして、中学生以降は学校でスポーツをしなければいけないという風潮ができてしまった。つまり学外のクラブよりも学校の部活優先ということである。子どもの方としても、そうしなければ学校でも友達もできず、気まずい思いをすることもあるのかもしれない。

 しかしながら、文部省が最近になって、部活動に対して一つの指令を出してきた。それは、部活動のやりすぎに注意し、最低週1日は休みを取ることというのである。一つは子どもにとって部活動が負担となったこともあるだろうし、先生の方も負担が大きくなっているのだろう。さらに学校週5日制の実施により部活の時間がさらに減少していくことはもはや避けられない状況だ。学校の部活動は、当然先生がクラブを担当するのだから、元々忙しい先生への負担がさらに大きくなる。しかも、体育系のクラブならば日曜日に試合も頻繁にあり、その自己犠牲はかなりのものだろう。自分でやりたいクラブならばまだしも、学校で押しつけられたものだったら、嫌気も差すかも知れない。

 私が考えるに、学校で行う部活動というのはかなり限界に来ていると思う。その辺は学校も文部省も分かっているようで、学校と社会教育組織の連携という事も言いだしている。ということは、今こそ少年レスリングクラブは中学生レスラーの受け入れ先として機能できるはずである。どうして多くの少年レスラーが小学校卒業と同時にやめてしまうかといえば、中学に入ったら学校のクラブに入らなければいけない、そして殆どの中学校にレスリング部がないからだろう。現状では中学校にレスリング部を増加させることはかなり難しい。とすれば、必ずしも学校のクラブに入らなくてもよいという時代が来れば、レスリングクラブに残り、中学生以降も練習を続ける子供が増えるはずである。私は現在の学校の部活動を鑑みるに、その傾向は以外と早くやって来るのではないかと思っている。

 私はレスリングクラブの各代表者に、もっと中学生も練習できる環境を整えてほしい、そう訴えたい。いくらクラブに残るといっても、中学生が2,3人であとはみんな小学生だったらやはり練習も難しいし、やっている子供も同級の友達がいなければ面白くもないだろう。その為には中学生が練習しやすい環境づくり、雰囲気作りが大切だ。もっとも、具体的にどうしたらよい、ということは今のところ私も答えがでていないが、各クラブの責任者の方々も、是非中学生レスラーのために、そしてレスリングの発展のために色々試行錯誤を繰り返し、ご努力願いたい、そして良い方法ができたら、みんなに広めてもらいたい、そう思っている昨今であります。


戻る