足を取られてからの技

新ルールのクラッチに対応して、研究、訓練しなければならない技に、足を取られてからの技がある。過去のレスリングのルールでも、足を取られてからの技は何通りにも変化があり、かつ有効で一気にピンチに追い込む場合も多々あった。歴代の名選手の中には相手が片足を取りに来ても逃げずに足を取らせて投げたり、潰したり、返したりして逆襲し相手を消耗させ、攻めの糸口を与えず、逆に狙い澄まして強烈なタックルを仕掛ける選手がいた。
 メルボルンオリンピック金メダリストの笹原正三前日本協会会長の左足は取っても誰も倒したことは無く、つきだした蟻地獄のような左足を誰も触らなかった。メキシコオリンピック金メダリストの金子正明選手は左右どちらの足を取られてもバックに廻らせることはなく、右に返し、左に返して、最後は相手を潰してバックな廻ってしまう。対戦相手にとっては攻めても攻めても捕まらないまったく始末の悪い選手だった。
 最近の選手は足を取らせないレスリングに徹しているが、新ルールに対応して片足を取らせてからさばく研究をしなければならないだろう。片足タックルは取った足の外側に頭を出した場合は、トーホールの逆襲を受けやすく、トーホールを防ごうとすれば、おのずと相手に背を向けてバックを取られてしまう。片足タックルは頭を中に入れるのが正しいタックルしされているが、頭が下がっていると返される危険性があり、頭が上がりすぎていると投げられる危険性もある。片足を取りに行くと言うことは、有効な攻撃手段だが、常に危険がつきまとうのも事実だ。クリンチでトスが相手に出て、相手の有利な体勢で片足を取られても、チャンスはまだまだあり、一発逆転の可能性は十分ある。強い足、弱い足、攻めやすい足、攻めにくい足、それぞれの条件があり、足を取られてからの研究は難しく、奥の深いものがある。
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