練習方法の再検討

戦後日本のアマチュアスポーツのお家芸と言われ、数々の金メダルを取った競技、水泳、体操、レスリング、重量挙げ、ボクシング、バレーボール、これらの競技がことごとく衰退し、世界的レベルから見ると二流になってしまっている。もちろん一部競泳など復活の兆しはあるが、かつての勢いはない。弱くなった原因については色々あろうが、はっきりした原因は各競技団体とも掴むに至っていない。強かった全ての競技が衰退していったことには、必ず共通した原因があるに違いない。日本国が豊かになりハングリー精神が薄れたこと、教育の中でスポーツをあまり重視しなくなったこと、世界のレベルが上がったこと、世界一流になった選手に対する待遇、コーチ制度の弱体等、各国と比較すれば確かに弱くなった原因はあるように思える。
 しかし、では強かった時代そんな待遇があったかと言えば、無かった。そうです。何もなかった時代に日本は強かったのです。私は強化策を難しく考えず、単純に強かった時代の練習方法をもう一度検証し、科学的とか、合理的とが、言わずに、昭和三十年、四十年、当時の練習をやってみたらどうかと思っている。
 最近の選手の体調ケアーの中でちょっと気になる事がある。それは練習あとのマッサージである。プロ野球の歴史に残る盗塁王、阪急の福本選手がこんな事を言っている。盗塁のスタートをきる瞬間は理屈とか、能力とか言う問題ではなく、目で状況を捕らえて、今と思った瞬間足が動き出すこの訓練を、何遍も何遍もの反復練習により筋肉に覚えさせるのである。練習後のマッサージはせっかく覚えた筋肉の記憶を消してしまうので、よほど筋肉か疲労したとき以外はマッサージはしない方がよい。この理論は医学的根拠はないが、日本一の盗塁王が経験から確立した、注目すべき理論だと私は思っている。そう言えば強かった頃の選手は皆マッサージなどしなかった。水を飲むこともそうだ、我々の時代は練習中は、決して水は飲んではいけないと言われていた。もちろん最近水を練習中に飲むことは医学的に良しとされてのことであるが、またやっぱり水を飲むことはいけないなどと言った理論も出てくるかも知れない。水泳も格闘技選手にはいけないと言われていたが、今はリラックスするのにとても良い、と言われている。私は毎日の反復練習で作り上げた筋肉は、練習後丁寧に伸ばして、後はそのままにして、自然に疲労を回復させる方が良いように思う。身体に関する理論はその時々で百八十度変わるので、今の理論が必ずしも正しいと思うことは危険だと私は思っている。それより自分に一番良い調整方法を自分で作り出すことが一番だ。

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