剣道の魅力
 
 八田会長はレスリング、柔道、合気道、杖術、剣道と多くの武道を修行したが、最後に傾倒したのは剣道であった。剣道こそ武道の極意であり、命を賭けた戦いから生まれた技には全てに哲学がある、と言っていた。参議院議員時代は議員会館の道場で、早大剣道部出身の産経新聞記者、加治氏を相手に毎日のように稽古をしていた。会長は上段の構えで、じりじりと相手に迫る姿は実に迫力があり美しかった。両者勝負と見て、裂帛の気合いと共に激しくうち下ろす竹刀はどちらが早く相手を叩いたかは私には判断できなかった。再び分かれた両者は又同じ構えで同じ事を繰り返す、迫力のある対決に私は固唾をのんで見入ったものである。
 八田会長の剣道は稽古と言うより、戦いと言う言葉が似合うものだった。稽古が終わり正座して面を外し、手ぬぐいを取る会長の姿は凛々し白髪の青年のようであった。八田会長はよく言っていた。「間合い、真剣勝負、抜き打ちざま、つばぜりあい、数えたらきりがないほど剣道から発した言葉が、通常の言葉の中に使われている。日本の心を伝える剣道を義務教育の正課にすべきである。」「その為に剣道界は防具を近代的に改良する必要がある。洗えて持ち運びやすい、安価な防具の開発が急務である。」
 八田会長は心底剣道が好きであったのだ。
 
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