受けの研究

 レスリングにおいてポイントは「攻めて取る」ことが基本あり、「受ける、守る」を主体としたレスリングは指導書にはない。しかし「受ける、守る」のは技術であり、攻めると同等のポイントゲットのチャンスがある。今のFILAルールは「受ける、守る」を技として新たな角度から研究する必要がある。
 私は昭和36年、37年、39年の全日本選手権で優勝している。当時日本には世界一流の選手が五人も六人もいたフライ級での優勝であったから大変な戦いであった。そして今その戦いぶりを振り返ってみると、そのほとんどが相手の攻撃を受けてからの反撃でポイントを得ていた。正確に言えば相手の攻撃を呼び込んでそれを捌き得点に結びつけていた。勿論、どんな相手からも得点できるタックルは持っていた。しかし、それは伝家の宝刀であって、立ち上がり一発技をかけたらしまっておき、後は受けてさばくレスリングをした。この様な試合の流れに持ってくれば、相手の攻撃を予測しての受けは単なる受けでなく攻撃的受けである。
 メキシコオリンピック金メダルの金子正明氏は最も受けのうまかった選手であった。当時もコーチ陣から攻めないことを批判され、なかなか評価されなかったが、メキシコオリンピック大会でコーチだった私は彼のレスリングを信じていた。金子は最後までそのスタイルを貫き金メダリストとなった。先日、全日本選手権で会ったので「君だったら延長で相手に攻撃権がわたってもむしろチャンスだね」と言ったら「えへへ」と笑っていた。
 コーチ、選手諸君、延長戦では30秒間相手にポイントを取らせなければ「勝ち」なのですよ、ポイント取らずに勝てるのですよ。
戻る