投げ技

 1964年の東京オリンピック頃までの日本レスリングはフリースタイルでも投げ技がかなり見られた。無敗のチャンピオン渡辺長武選手は誰と対戦してもまず強烈な首投げをかけた。対戦相手は渡辺の首投げを警戒する余り腰が引ける。そこを低い体勢から両足タックルに入り一気に持ち上げてしまうのが渡辺の先制攻撃であった。
当時の選手達は首投げ、一本背負い、飛行機投げ、かぶりから牛殺し、首をがぶってからの内股、パンケーキ返し等々多岐に渡り投げ技を持っていた。投げ技を技術的に教えるは難しい。投げのタイミングは理屈ではなく反復練習から会得した感性である。
私は技術的に教えることは出来ないが、投げを会得する方法だけを書きたい。投げの感覚を掴むには何をおいても正しい打ち込み練習である。それには打ち込みを受けてくれる相手が必要であるが、打ち込みを受けるにはそれ相当の技術が必要である。この辺が投げ技か今の選手の身に付かない一因と思える。投げ技を会得するには受けが出来るパートナーを作る必要がある。最近選手の打ち込み練習を見て感ずることは、タックルの打ち込みは実に念入りにやっているが、投げの打ち込みはほとんどやらない。正確な投げの形を反復して打ちこむことこそ投げ技を会得する近道なのだ。今のルールは投げ技を生かすチャンスが少ないのは確かだが、攻撃の幅を広げタックルの効果的なチャンスを作る上でも投げ技は必要なのである。

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