勝利を掴むコツ

 いかなる競技にも勝つコツがある。陸上競技の100メートル競走ですら、タイムの良い選手が勝つとは限らない。勝つコツを会得している選手は臨機応変に試合の流れに対応して、持てる力を100パーセント以上出して勝利を得る。

 レスリングにおいては、勝つコツを身につけることが何より重要である。最近の日本男子選手は勝つコツを知らない。
 まずタックルが遠すぎる。相手に接近して、動いて、動かして、タックルを決める。そうした日本独特の試合がほとんど見られない。勝つにしても無理に力づくで勝っている感じがする。
 勝つ事のうまい選手は流れるように試合を運び、流れの中で勝機を掴み、数度しかないチャンスを確実にものにするのだ。完全にポイントを取ったかに見える体勢で、みすみすチャンスを逃がしてしまう試合をたびたび見る。これほどもったいないことはない。

 その点、女子の吉田沙保里、伊調馨、は勝つこつを知っている選手だ。彼女たちはどの試合でも試合の始まりから終わりまでを常に頭に描いている。勝負どころも常に計算して試合を運んでいる。だから思わぬ失点をしてもあわてず着実に挽回して、最後は必ず勝利を得ている。

 勝つコツを知っている選手は、ポイントを取るパターンを数通り持っており、試合の流れをそこに持って行く術を知っている。相手を自分のペースに持ち込むには、力ずくでは無理である。動きながらむしろ相手に合わせ、相手を動かして勝機を掴む。
 相手十分、後の先もチャンスを作る上で重要である。相手に合わせて誘い込む体勢がレスリングの極意である。非常に難しい体勢だが、まず相手に接近しつつ、相手の攻撃をかわす、そして相手を倒す、これこそ勝つコツだと思う。


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